来 歴



天の手


乳白色の霧の色の上へ
なおまぎれもなく花の白を塗りつけるもの
玉あじさいの玉をほどいて
泡のような花を足下の空へ浮かばせるもの

苔のすきまを流れながら
清冽な叫びを遠い谷まで送りとどけるもの
はるかな麓へなだれている草の海に
ふさわしい鳥の声をちりばめているもの

自然の所為というには
あまりに周到な山の展開図
鮮やかな緑にぼかされた視野の裏側に
人の心を引き上げてやまない巨大な手が
山頂の更に向こうの高みからのびてくるのだ

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